大阪→岩手の1000キロ移住!
大阪府出身の私が、結婚を機に岩手県に移住して一年が経ちます。
移住してみて思うのは、岩手がとても広いこと(四国四県と同じくらいの面積があります)と、大阪から岩手までの1000キロという距離が驚くほど近くなったことです。どこまでも先にあると思っていた大阪と東北が、きゅっとヒモで結ばれたように身近に感じるようになりました。
岩手での生活は、結婚前に二年、結婚後に一年とまだ浅いものの、土地や人とのつながりができるにつれ、大阪にいたときとは違うワクワクが日々を彩ってくれています。
移住したきっかけ
五年前までは岩手県と秋田県の位置すら曖昧な私でしたが、大学卒業後、「被災地について知りたい」という思いから東北を訪れたことがきっかけで、岩手県の沿岸部にある町で仕事をすることになりました。
紆余曲折ありましたが、2020年、今の主人と結婚し、岩手県への移住を決断します。
震災は多くの人の心に、「このままでいいのだろうか」という深い問いをもたらしたように思いますが、私もまた、震災によって大きく人生の舵を切ることになった一人かもしれません。
移住を決断したポイント
私の移住決断ポイントを以下に挙げます。
・山・海・川など自然が豊か
・生活に必要なものが近くにある
・畑を持てる ・地域の人がよそ者に対して理解がある
私の住んでいる市は、東京や大阪のようにオシャレな店が溢れているわけではありません。 それどころか、私が初めて訪れた頃はまだ、仮設住宅や仮設商店街があり、まだまだ復興道半ばという様子でした。
ですが、スーパー、ドラッグストア、コンビニ、ホームセンター、百均、本屋がそれぞれ何店舗かあり、数十の飲食店があり、私はあまり不便を感じませんでした。
それに、市役所や税務署、郵便局、商工会議所などが車で十五分圏内に揃っているので、もしかすると大阪の実家よりも便利な側面もあるかも、と思っています。
華美なものを求めると、高速を使っても車で二時間はかかります。 でも、実際に物足りなさを感じているのは、映画館が近くにないことくらいでしょうか。
色々と理屈っぽく並べましたが、最終的には「岩手が好き」という感情の部分が大きかったようにも思います。
家の探し方
主人が住んでいた家は、結婚後すぐに出ることになってしまったので、家探しをしました。
海が見えるところがいいとか、あたたかそうな家がいいとか、予算はいくらくらいかとか、まずは理想の物件を考えてから、物件探しを始めました。
私たちの住んでいる市では空き家バンクがほぼ機能していないため諦めましたが、空き家バンクが充実している市区町村なら、ツテや不動産会社のほかにそういったところで探すこともできると思います。
我が家もツテも使いましたが、仏壇がある家だったり、借家ではなかったりと条件が合わず、結果的に不動産会社を通して四軒ほど内覧に行きました。
家は暮らしの基盤になるので、なるべく妥協しないで、良い家が見つかるまで探したほうがいいと思います。
ちなみに、我が家は以前住んでいた家よりもあたたかく、少しですが海の見える場所になりました。予算は若干オーバーでしたが、自営業なので、頑張って働こう、ということで合意に至りました。
以下に、今の家と、内覧には行ったものの住みたいとは思わなかった家の、それぞれの理由を書き出します。
今の家に決めた理由
・インターが近い
・コンビニが近い
・部屋数がちょうどよい
・収納が広い
・神棚が大きい
・トイレ・お風呂がリフォーム済み
・サンルームがある
・津波で被災していない
何を重視するかは人それぞれだと思います。
住みたいとは思わなかった家の、妥協できなかったポイント
・坂の途中に家があり、車の出し入れがしづらい
・家が古すぎる
・収納が少ない
・トイレが古く、狭い
・お風呂が古く、汚い
・ベランダなどがなく、布団や洗濯物を干す場所が完全に外になる
基本的に何らか、不便を感じる要素があったように思います。 毎日のことなので、嫌だな、という感覚は大事にした方が良いと思います。
ハザードマップは重要
被災地という土地柄、どこが津波浸水区域かというのは気になるところでした。
地元の人のように地理に明るくないため、もしものときに避難路がパッと浮かばないからです。
以前の家は庭先まで浸水していますが、新しい家は高台にあるため、津波の心配はあまりありません。
津波が来ないような土地でも、川や山が近ければ災害に見舞われることは考えられます。
家を決めるときには、その場所にどんな危険の可能性があるか知っておくといいと思います。
移住して困ったこと
個人的にとても困ったのは、友だちがなかなかできなかったことです。
私の住む市には大学がないため、二十歳前後の若者の多くが地元を出てしまいます。
結婚前に住んでいた二年、私は二十代前半でしたが、同年代の友人と呼べるような人にはほとんど出会えませんでした。
子どもがいたり、外に仕事に出ていれば違ったのかもしれませんが、ゲストハウスの手伝いをしていて出会うのは一日限りの旅人ばかりです。
地元の人に会うといっても、その多くは六十代を過ぎています。四十代を若者と呼ぶような土地なので、二十代前半の私にとっては、そこに大きな壁を感じてしまいました。
興味のある場所に積極的に出かけること
二十代後半の今、若者がいないことに対する寂しさは若干、軽減されてきています。
それよりも、結婚してからの一年間は、自分の趣味や思想を理解してもらえる人に出会えないことの方が苦痛でした。
私の場合は農業に関心があったため、地元の農家さんと一緒に稲作をさせてもらったり、地域の方から畑を借りるようになって、少しずつ「農業」という話題を通して交流できる人が増えていきました。
ちょうど県内で農業の講座が開かれるというので参加したところ、関西出身で岩手在住の方と出会うことができました。その方は私よりも長い移住期間があり、関西出身の岩手在住者ともつながりがあります。
その方を通して、これまで知らなかった岩手のお店や人に出会うことができ、徐々に私の関心のある世界が広がっていくのを感じています。
興味のあるセミナーや教室、お店に出かけると、趣味の合う人に出会える確率はとても高くなります。
心の通い合う友人が一人いることは、その土地で生き抜く支えになると思います。
移住してすぐは、家に慣れる、土地に慣れることで精一杯かもしれませんが、少し落ち着いてきたら、積極的に興味のある場所へ顔を出してみると、思わぬ出会いがあるのではないでしょうか。
移住に悔いなし
・農業に関心がある
・都会にいると疲れる
・新しい土地で暮らしてみたい
私のこのような考えは、東北での暮らしととてもフィットしています。
年配の方の訛りがきつすぎて話が噛みあわないとか、結婚したと聞くとすぐに子どもはまだかと言い出すちょっと失礼な人がいるとか、プチストレスがないわけではありません。
でも、海と山に囲まれたこの土地にいると、ふっと気持ちが和らぐことが増えたように思います。
どこにいても人との関わりはあって、どこにいてもストレスはあって、どこにいても不便はあって。それでも自分のやりたいことができる環境にあるというのは、とても贅沢なことではないでしょうか。
海の見える畑を持つことができたり、立派な平屋の家に住めたり、山菜採りや釣りに出かけたり、大阪にいたときには想像できなかったような日々が、今とても楽しくて、充足感を感じています。
ワクワクは与えられるものではなく、自分で創造していくものだと、岩手に移住して、強く感じるようになりました。
移住を考えているなら
移住を考えているなら、まずはその土地に何度も足を運んでください。
なぜならそこは、もし本当に移住したなら、毎日暮らす土地になるからです。
何度も足を運ぶうち、今住んでいる場所の魅力に改めて気付いたなら、今のままでいいのかもしれません。
でも、足を運ぶたびにワクワクして、幸せな気持ちになれるなら、土地が呼んでくれているのかも……と私は思います。
移住には、80%のワクワクと19%の計画性と、1%の覚悟が必要です。 一度きりの人生で、どこに住みたいか、どんな暮らしがしたいかを考えられるのは、とても素敵なことではないでしょうか。課題や不安もあるかと思いますが、ぜひ前向きに計画を立ててみてください。